これからマレーシアに住みたい人にとって、手っ取り早い就労ビザの取得方法は「コールセンターに勤める」こと。
マレーシアではBPO(Business Process Outsourcing)企業が優遇されており、多言語なお国柄や人件費も安いことなど、会社にとってのメリットが沢山あります。
BPO企業がマレーシア経済にもたらす効果はなんと1400億を超え、コンサル会社のKearneyの調査によると、マレーシアはBPOに適した国としてインド、中国に続く第三位に認定されました!

しかし、マレーシアのコールセンターを紹介しているコンテンツは多々ありますが、実体験に基づく具体的な情報は少なく、実際にどのように仕事が行われているのかを把握するのは難しいです。
人材紹介会社のウェブサイトやボンビーガールという番組などがそれに当たりますが、彼らも宣伝費を貰ったり、入社してくれた方が儲かるので至極当然です。
そういった偏った情報により、少し胡散臭いと感じてしまう方も少なくないでしょう。

そこで今回、マレーシアのコールセンターで2年間勤めているN氏にオンラインで取材しました。
コールセンター勤務者の生活から、ネットでよく言われている噂まで、根掘り葉掘りインタビューしていきたいと思います!

今回のインタビューの登場人物


トレすけ

当ブログの管理人。コールセンターについては何人かの知り合いが働いているので、噂程度に知っている。今回はインタビュアー。


N氏

20代女性。二年前、トレすけが語学学校で英語を勉強していた時、同じ学校の生徒だった。その後マレーシア就職して今に至る。マレーシアロックダウンの辛さを共有できる数少ないお友達。

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マレーシアに来た理由や現地での生活について

トレすけ

まずは、マレーシアに来た理由やコールセンターで働くことになった経緯を教えてください!

N氏

最初に私がマレーシアに来た理由は、英語を勉強しようと思ったから。
本当は親からも勧められたカナダに行こうと思ってたけど、寒いところが苦手で(笑)
コロナ前のマレーシアは留学制度が整っていて、ここだ!とピンときました。

トレすけ

ってことは、気温の問題が無ければカナダに行ってたの?

N氏

そうかも。
あと、両親はイスラム教を良く知らないから、漠然と危険というイメージを持ってたようで、それもあってマレーシアよりカナダを薦めてきたみたい。
結局はマレーシアに決めたけど!

トレすけ

イスラム教を誤解している人が多いけども、中東の一部地域のような、過激派組織が跋扈する地域以外だったら十分生活できるよね。
実際に来てみて、事前情報と違ったり不便な事はあったりした?

N氏

逆に、想像より便利でした。
英語無しでもめちゃくちゃ生活がしやすい!
特に病院やクリニックなどの医療関係は、日本語対応可能なところが多いし保険もちゃんと使える。
リタイアメントビザで住んでる人が多いのも納得だね。

トレすけ

なるほど。
ところで東南アジアというと、衛生面は気になる人が多いと思う。
そのあたりはどうでした?

N氏

うん、やっぱり私も最初は無理だった。
なんとなく汚いっていうイメージがあって。
でも学生を終えて就職して、オフィスで働いていた時、会社の近くに中華系コピティアム(フードコートのようなもの)があったんです。
日本人の目から見ると綺麗とは言えない店なんですけども、毎日同じランチも飽きるのである時試してみました。
そしたら、そこのチキンライスがすごく美味しくて(笑)

トレすけ

それ以来、免疫が付いたと(笑)
マレーシアはインドやベトナムとかと比べると安心して食べられるよ。
日本人は食べない人が多いけど、なんでだと思う?

N氏

やっぱり辛さ、油っぽさ、お腹壊しそうっていうイメージじゃないかな?
私は今や新しい食べ物に挑戦するのが楽しくなってきたけど。

トレすけ

かなり現地に馴染んできたってことだね。
次は今回の取材のメインである、コールセンター業務について聞かせてほしい。

コールセンターという仕事について

トレすけ

語学学校で英語を勉強した後、コールセンターに就職を決めた理由を教えてください。

N氏

学生時代は勉強というより、楽しく生きてたかな(笑)
そのせいで英語はあんまり上達しなかった。
でも留学後に就職を決めたのは、留学中にマレーシアで多国籍な友達ができて楽しかったから、まだ日本に帰らないでここに居たいと思ったのが大きな理由。

トレすけ

日本人の多くは、海外で暮らす理由として「外国人と関われる」というのがあるように思う。
でも、コールセンター業務で外国人の友達ってできるものなのかな?

N氏

そこなんだよね。
会社で日本人は日本チーム(日本にいる顧客に向けて日本語で対応する部署)に入ることになるので、自ずと日本人だけの付き合いになりがち。
だから入社を考える際は、「英語が使えて上達する」とか思わない方がいいです。

トレすけ

中にはエマージェンシー対応など、英語を使う部署が存在するって聞いたけども、そこでもだめ?

N氏

確かにそういう部署はあるよ。
英語を話せる人はそこに配属されることもできる。
けど、仕事上で話すのはクライアントだけなので、華々しい憧れの海外生活!みたいなのは期待しない方が良いかも。
もし外国人と交流をしたいなら、お昼などの自由時間に社内で外国人チームの人と話すことはできるよ。
アニメなどの日本文化に興味をもってくれる人も多いので、積極的に話しかけてみるといいかもしれないね。

※現在はコロナ禍によるロックダウン中の為、会社出勤が制限されています。

トレすけ

なるほど。
やっぱり、業務時間外に意識的にコミュニティに参加したりしないとだめなんだね。
僕が勤めてる会社でも英語より日本語を使う機会が多いから、それはコールセンターだけのことではないかも。
日本人は日本語ができる事が一つのスキルになるから、日本語を使う仕事に就きやすいのは自然な事だけどね。

トレすけ

ところで、実際の業務はどんな感じ?
かなりストレスのかかる仕事だって聞いてるけど……。

N氏

業務自体は慣れれば誰でもスムーズに対応できると思う。
私自身、今となってはストレスもあまり感じなくなった。
日々の生活の中で、自分に合ったストレス発散方法を見つける事が大切だね。
ただ、私のように嫌な気持ちを1日で完結させられるタイプならいいけど、後に引きずっちゃうタイプにはお勧めできないね。
あと業務上、たまに難しい対応に迫られることがあるけど、そういう場合も上司がヘルプに入ってくれるから安心して大丈夫。

トレすけ

コールセンター業務が、未来のキャリアの為になることは何かありますか?
例えば、接遇スキルが身に付くとか。

N氏

パソコンのタイピングが上手くなるってとこくらいかな。
コールセンター業務をずっとやるなら経験になるけど、何か別の仕事に就くために経験を積む感じではないよ。

トレすけ

それでも2年以上勤めてるのはなぜですか?

N氏

日本で仕事をしてた時は少し上の方のポジションに居たから、仕事に責任感を感じてたんだよね。
それは良い事だし、普通の事なんだけども、一つの仕事をするのにかなりの重圧を伴ってた。
コールセンター業務にも責任は一応あるけど、例えば電話対応一本したときに、その対応が終われば終わり。
常に負荷がかかり続けるわけじゃない。

トレすけ

電話対応は結構ひっきりなしにかかってくるんじゃない?

N氏

感覚的に、10件のうち8件はほぼ同じ内容だよ。
その中の2件、ストレスのかかる難問があったりするわけよ。
勿論、分からない時は上の立場の人に手助けしてもらえるから、解決自体はできる。
まぁ暴言とかは辛いけど、全部が全部暴言なわけではないし。

N氏

結局、どう捉えるかの問題だと思う。
今日が運が悪かったとかね。

トレすけ

メンタル強いなぁ(笑)
僕なら不条理な事を言われたら、引きずるか、怒るかすると思う。

N氏

私は暴言とかを聞いた時、「自分自身はそういう人間になりたくない」と思って聞いてる。
あ、こういう人居るんだ~みたいな、人生勉強だと思うんだよね。

トレすけ

反面教師にしてるって感じだね。
ポジティブに考えればそういう見方もできるし、今後ちょっとやそっとじゃめげない人間になれそう。
N氏が二年以上コールセンター勤務を続けられてる理由が少しだけ分かった気がする。
噂では結構人が辞めるという話を聞くけど、実態はどんな感じ?

N氏

まず、私と同期の20人中、半分は研修期間中に辞めたよ。
今、2年経って残っているのは4人

トレすけ

正直、会社としてはかなり定着率が悪いね。
人を選ぶ仕事だってのが分かる。
日本人であれば他業種より比較的簡単にビザが出る仕事だから、海外生活に憧れる人にとっては有力な選択肢かもしれないけど、よく考えたほうがいいかもね。

N氏

うん。
それに関連したことだと、ぶっちゃけコロナ禍(MCO期間)に就職を決めるのはお勧めしないよ。
BPO企業には「縛り」のような契約があって、例えば何カ月、何年以内に辞めると罰金とか……。
MCO期間中に海外に憧れて来たのはいいけど、実際の海外生活に耐えられずペナルティを払ってでも帰りたいっていう人も居る。
最近は、私の会社でも本帰国する人が多くなって寂しくなってきてる。

トレすけ

BPOの給料水準は他業種と比べてかなり高いけど、こういうデメリットも考えなきゃいけないね。

N氏

会社も渡航費用(航空券代)、ビザの代行費用を払ってわざわざ来てもらってる。
今だと隔離費用なんかも上乗せされるよね。
でも仕事が合わないとか、生活に耐えられないとかいう個人的な理由で辞める場合は、どうしても違約金が発生するよ。

トレすけ

会社側から見たら雇い入れは投資みたいなものだもんね。
投資失敗したら少しでも元本を回収したいって気持ちもわかる。

N氏

最近はコロナ禍によりイミグレーションの動きが遅くなって、ビザの関係などで渡航がスムーズにできないケースが多いみたいだよ。

トレすけ

完全にストップしてはいないものの、ビザの発給を待っている日本人は沢山いるみたいだね。
あと、今はロックダウンで引っ越しもままならないし、新生活を始める準備がきついよね。
コールセンター勤務の方は英語が苦手な方が多いと思うけど、この辺りはスムーズにできるものなの?

N氏

普通の時期はまず大丈夫。
日本人の不動産エージェントもいるし、日本語だけでもなんとかなるよ。
でも、問題はお金。
給料出るまでに1か月くらいかかるし、しばらく手元にはマレーシアリンギットが無いことになる。
最低でも家を借りるための、デポジット等の費用分を貯蓄した状態で来なきゃダメだね。
たまにギリギリの貯金で渡航してきて、慌ててる人も居るんだよ(笑)

トレすけ

それは困るだろうね(笑)
僕達は元々学生としてマレーシアに居たからそういう事情に詳しいけども、日本から遠隔で面接して一度もマレーシアに来たことが無いのに就職が決まった人とかは大変。
賃貸契約の話は以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてみてね。

マレーシアのお部屋探しで注意する事は?賃貸契約のルールを詳しく解説します

コールセンターの待遇やその他所感

N氏

色々話したけど、普段の生活は日本人にとっては便利過ぎちゃうから、実際あんまり英語を必要としないんだよね。
医療、不動産、食べ物、全部日本語サービスに頼ったら、英語が全くできなくても大丈夫。

トレすけ

海外に住むこと自体を目的として、仕事はサブってことだね。

N氏

仕事以外にいかに楽しみを見つけられるかってとこだと思う。
この仕事は20代が多くて、やっぱり30手前で帰国する人が多い。
理由は結婚を考えてとか、業種を変えるための転職とか様々。

トレすけ

それ以上の年齢の人はいる?

N氏

勿論40、50代の方もいるよ。

トレすけ

なるほどね。
給料面についてはどう思う?
求人票を見る限り、全体的に高い水準でまとまってるように見えるけど。

N氏

今はRM7,500から8,500くらいで募集されている感じだね。
ただ、募集時期によってかなり変わるよ。
3、4年前はRM5,000~6,000とかだった。
その数か月後にはBPO事業の拡大とかで、RM8,000以上の募集が出たりした。
今はピークだった時(RM9,000前後)よりは下がってきてるね。

トレすけ

現地採用という枠の中で言えばかなり高いね。
スキルや経歴を持っている人でも最初はRM5,000~7,000程度で採用されることが多い中で、やっぱり突出してる。

N氏

ただ、問題点もある。
大きな問題の一つ、「既存社員の昇給について」を説明するね。
新卒の給料水準が上がるとなった時に、日本では既にいる社員の給料は少なからず上がるよね?

トレすけ

一般的にはそうだね。
去年入社した人が、今年入社した人より給料低いってのは考えにくいし。

N氏

でも、BPOでは入社後に給料は上がらない。
上がるとしたら昇進の時だけだね。
だからもし入社するなら、最初の交渉がめちゃくちゃ大切。
「マレーシアは交渉が出来る!」という事を忘れずに、自分のいいところ、会社の役に立てるところを材料として交渉するべき!

トレすけ

例えば、最初からRM9,000とかで入ってくる平社員も居れば、RM6,000で入った昔からのベテランが昇進してもRM7,000とかになっちゃうってことだね。
新人より仕事ができて、ポジションも上なのに、給料は全然低いって事もあると。

N氏

そう。
そのあたりの調整はうまくいってない感じがするよ。

トレすけ

なるほど。
転職事情はどんな感じ?
マレーシア国内に絞って教えてください。

N氏

転職する場合、コールセンターだと”必ず”給料は上がるよ。
経験年数としては、前の会社でコール業務を1年くらいやってれば大丈夫かな。
会社は経験者を求めてるから、学歴よりは経験を重視するみたい。
特に事業拡大したいBPOから、そういった人材の需要が高い。

トレすけ

例えばだけど、直接コールセンター業務の経験が無いとしても、接客業のクレーム対応なんかは経験になる?

N氏

私はやらなかったんだけど、「交渉可」という事実を知ってれば交渉は出来たと思う。
勿体ない事をした(笑)
さっきも言った通り、その会社で役に立つと思う事はとりあえず全部言って交渉すべきだね。

トレすけ

ちょっと話が変わるけど、外資系BPOが日本進出したりもしてるよね。
人件費の安いマレーシアで雇われるのと比べて、日本でコールセンター勤務するという選択はどうなんだろう?

N氏

私の会社も在日本法人があるよ。
そこで働くことを選択する人も多くて、最初はその人たちはゆくゆくはマレーシアに来たいのかと思ってた。
でもね、今日本にあるコールセンターの会社っていうのは、オフィスがあって出社することが前提になってる。
そこに新規進出してきた外資系BPOはオフィスを持たず、在宅勤務としてるところが多いんだよ。
このコロナ禍で、出勤の可能性がある日本の会社より、日本にある外資系で働くっていうのも意外といい選択なんじゃないかな?
希望すればマレーシア法人に移籍して、こっちに住むこともできるよ。

トレすけ

確かに、在宅で働けるのはかなりのメリットだね。
給与面はどうかな?

N氏

実は、日本では日本基準の各種手当等がついて、マレーシアの給料帯より多く貰えることが多いらしい。
詳しい額は知らないけどね。
保険も入れるし、厚生年金とかもメリットいっぱい。
海外に住みたいって希望が無ければ、そっちもいいかも。
勿論日本なら全然違う業種に就くことも簡単なので、あくまでコールセンター業務をやってみたい人向けだね。
ちなみに渡航費用も発生しないので、辞めても違約金が発生しない会社もあるみたい。
この辺りは会社によって違うので、就労予定先の会社によく確認することをオススメします!

トレすけ

もし今マレーシアに来ることを考えているなら、まずは日本法人の方で試しに働いてみるのもいいかもしれないね。
最後に、コールセンターで働くということについてどう思うか、簡単に教えてください!

N氏

業務自体は、日本での仕事よりは楽だと思う人が多いよ。
仕事の半分以上はほぼ同じ内容だから作業感覚で出来る。
楽かどうかの感じ方は人によるから、それを苦痛と感じるかどうかは本人次第かな。
クレーム処理というとストレス過多のようなイメージがあるかもしれないけど、仕事以外の部分で楽しみを見つけて楽しくやっていくことは十分可能。
マレーシア自体も魅力ある国だし、コロナ禍が収束したら選択肢の一つとして考えてみていいと思う!

トレすけ

色々教えてくれてありがとうございました。

インタビューを終えて


マレーシア就職が簡単だとして話題のコールセンター。
その実態に少しでも迫れたかな……?

僕の結論としては、仕事の他にしっかりと目的意識をもって取り組むなら選択肢として非常にアリだと思いました。
海外生活を楽しんだり、何かを学ぶ機会にしたり。
幸い生活費が安く、給料は比較的高いといった状態になるので、お金を貯めたり、余剰分を趣味に回すなんてことも可能です。
向き不向きはかなりある仕事なので一概にオススメとも言えませんが、チャレンジしたいと思った時の参考になれば幸いです。

より詳しい情報が聞きたい方には、コールセンター勤務に詳しい方を紹介することもできるので、お問い合わせページから連絡ください。

この記事のおさらい

コールセンターは性格によって向き不向きのある、かなり人を選ぶ仕事です
給料を含め、待遇は他業種と比べて良い。ただし、しっかり交渉すること!
海外生活や勉強など、仕事以外に目を向けているならアリ!