世界三大料理の一つ、中華料理。
中国の広大な国土は地方によって気候も違い、料理に使われる素材も様々です。
長い歴史から生み出された調理法の数々により、バリエーションの豊かさが特徴と言えるでしょう。
マレーシアの3民族の一つ”中華系マレーシア人”は、そんな奥深い中国料理の系譜を継いでいます。
この記事では、数ある中華系料理の中から有名なものや、僕が特に好きなものを厳選して紹介します。
中華系の料理とは
中華系料理とは、マレーシアの三大民族のうち、約3割とマイノリティの中では比較的多数派を占める中華系によって作られた料理。
中国本土と全く同じ料理(以降、中華料理とする)もあれば、マレーシアで独自にマイナーチェンジ化したものも存在します。
元々は広東省をはじめとした南部の中国人が、貿易商や出稼ぎ労働者としてマレーシアに移住したのが始まりと言われています。
中でも海南人は飲食関係に従事する人が多かったそう。
シンガポール国立博物館の生活展示によると、海南人達は単身の中国人へ軽食を提供する屋台を形成、後にコピティアムとして文化に根差したとの記述があります。
海南鶏飯(ハイナンチキンライス)など、民族の名を冠する料理があるように、彼らは料理上手だったもよう。
代表的な中華系料理の紹介
ご飯もの
海南鶏飯(ハイナンチキンライス)
カオマンガイやナシレマアヤムゴレンなど、「鶏肉+ご飯」は東南アジアにはよくある組み合わせ。
しかし、鶏の調理法が選べるのはマレーシア(とシンガポール)の海南鶏飯ならでは。
大抵のお店では、”蒸し”か”焼き”かを選べます。
蒸しは柔らかくジューシーに、焼きは皮がカリっと香ばしく仕上がっています。
セットには鶏だしのスープや、オレンジ色のチリソースが付属することが多いです。
炒飯
日本でもお馴染み、炒飯にも色々な種類があります。
卵(とネギなど)のシンプルな蛋炒飯
五目炒飯に似ており、たまにレタスが乗っている揚州炒飯
あんかけになっている福建炒飯
タイ料理と混ざってしまったトムヤム炒飯や、中華料理なのかすら怪しいナシゴレンチナなど、無数に存在。
マレーシアでは、分類がかなり適当。
名前が同じでも、味付けは店により様々です。
KLCCの近くにあった、学生時代のお気に入りの炒飯屋がつぶれてしまって悲しい……。
擂茶(Lei cha)
擂茶は、ピーナッツやバジルなどの香草を練ってお茶状にした客家料理。
野菜を中心とした具材と共に、ご飯にかけていただきます。
ピーナッツのおかげか、乳製品を使用していないのにクリーミーで濃厚なお味。
中華風のこってりとしたお茶漬けといったところ。
胃にやさしい感じがします。
ビタミンを中心とした野菜由来の栄養が豊富ですが、ナッツのせいか意外にハイカロリー!食べすぎ注意ですね。
鍋・スープ系
肉骨茶(Bak kut teh)
マレーシア中華の代表格と言ってもいい肉骨茶。
豚の出汁と漢方の香りが効いたスープ料理です。
スープはお代わり自由、ご飯や油条(揚げパン)をスープに浸して食べるのが一般的。
シンガポールにも同名の料理がありますが、色と香りが薄く塩気の強いシンガポールのものとは違い、マレーシアでは漢方の香りが強く濃茶色をしています。
元々はポートクランに上陸した福建人労働者が、貧しいながらも精のつくものをということで作り出した料理。
祖国から持ち寄った漢方と、ささやかに肉の残った豚骨からスープを作ったのが起源とされています。
ちなみにジョホール・バルでは色が薄め(シンガポールほど薄くない)な、マレーシアとシンガポールの中間のような肉骨茶に出会えます。
麻辣火锅(Ma la huo guo)
最近日本でも人気の火鍋。
マレーシアにも多くのお店がありますが、完全に中国の料理です。
重慶火锅とも呼ばれ、重慶・四川地方発祥のかなり辛いしゃぶしゃぶといったところ。
麻辣スープの主な味付けは、白湯スープに唐辛子(辣)と花椒(麻)の辛味が染み出した牛脂を加えたもの。
スパイスはそれぞれ辛さの種類が異なり、辣は一般的な唐辛子の辛味で、麻は舌の痺れと表現されます。
店によってはクミンや八角などの香辛料で香りづけしていることも。
スパイスの配合で店毎に味が異なることも面白いです。
マレーシアでも流行している中華料理の代表格。一時期は新しい火鍋の店が乱立しまくってました。
食べ方としては、色々な具材を用意し、しゃぶしゃぶのようなスタイルでいただきます。
数秒で上げてしまう日本のしゃぶしゃぶと比べ、どの具材も長時間の加熱が必要。
なので、しっかりとスープの味が染み込みます。
豚の脳みそや内臓類など、あまり日本では見慣れない食材もあるので、加熱時間が分からなければ店員さんに聞いたほうが安全です。
辛いものが苦手な方は、セパレート鍋を使って麻辣味以外のスープを注文しましょう。
白湯スープや番茄(トマト)スープ、菇(キノコ)スープなどを用意しているお店が多いです。
麺類
アッサムラクサ
ペナン発祥のアッサムラクサは、酸味の強い少し癖のあるラクサ(スープヌードル)。
スープのベースはタマリンド、サトウキビの汁。
タマリンドはタイでよく食べられるフルーツで、強い酸味が特徴です。
そこに鯖などの青魚の身が加わり、魚介の風味と甘酸っぱいスープが何とも言えない絶妙な旨味を生み出します。
ミントや唐辛子、パイナップルなどがトッピングされ、かなり爽やかな味です。
麵はタピオカ粉から作られるプルプルとした弾力のある麵なので、宅配しても麵が伸びず美味しいです。
……ここまで書いて気付きましたが、知らない人が読んでも想像つかない味だろうなと思います。
僕は好きなんですが、日本人は苦手な人が多いよう。
ペナンのアッサムラクサ発祥店でも食べたけど、ぶっちゃけKLの店の方が美味しい気がします。※個人の感想です。
この料理に限らず、東南アジアではペースト状のタマリンドは酸味付けのためよく利用されます。
云吞面(Won ton mee)
写真を見て、ワンタンはどこだ?と思った方へ。
名前からして云吞(ワンタン)がメインかと思いきや、云吞面のワンタンはおまけみたいなもんです。
付属のスープに入っていたり、麵の横に雑に乗せられてたりします。
それよりも、メインとなる具はお肉と野菜、唐辛子の酢漬け(重要)です。
甘辛い味付けのチャーシューが乗った叉焼云吞面や、豚肉をカリカリに焼いた”脆皮烧肉”が乗った烧肉云吞面なんかが美味しいです。
唐辛子の酢漬けは箸休め感覚で麵と一緒に食べると口内がリフレッシュされます。
酢漬けされているおかげで辛みは薄くなり、パリパリと漬物感覚で食べられるレベルに。
一応スープ入りも選べますが、云吞面は汁なしの方が断然オススメ。
豚の旨味がしっかりと出た、黒い濃厚なソースを麺に絡めながらいただきます。
板面(Pan mee)
客家や福建の文化を継いだ料理、板面。
こちらも前述の云吞面と同じく、スープ入りか汁なしが選べます。
云吞面の麺が細麺だったのに対し、板面の麺は比較的太く、モチモチとした食感が特徴です。
板面の中でも有名なのはDry Chili Pan mee。
唐辛子フレークやアンチョビ、ポーチドエッグ、木耳などの具材を、混ぜそばのようにグチャグチャに混ぜていただきます。
云吞面、板面はラクサシリーズと並んで軽食の定番!
猪肉粉(Pork noodle)
正式名称というか、名前は単純に豚肉麵ということなのですが……フードコートによく出てきます。
シンプルな豚肉が入ったヌードル。
スープは塩胡椒が効いた味だったり、豚骨のような味だったり様々です。
麵が選べるお店が多いので、黄麺やビーフンなどから好きなものを入れたりも出来ます。
豚肉を入れた麺料理をとりあえず猪肉粉と呼んでいる感じ?
料理名としてあんまり定義されてない気がします。
炒め物
チリクラブ
シンガポール旅行で必ずオススメされる有名な料理、チリクラブ!
日本ではあまりカニに濃い味付けをして食べる文化はありませんが、東南アジアでは甘辛いカニを味わえます。
カニの種類は殻が分厚く、硬いノコギリガザミが主に使われます。
カニ、ソース、具材を一緒に炒めるので、魚介の旨味が染み出たソースかからんだ他の具材も絶品。
馒头(Man tou)という中華パンを注文しておいて、余ったソースにディップしながら食べましょうね。
ちなみに価格はシンガポールの三分の一程度。
シンガポール発祥の料理とはいえ、まずはマレーシアで安価で試してみるのもお得ではないでしょうか?
麻辣香锅(Ma la xiang guo)
麻辣火锅と一文字違い、だけど見た目は全然違う!
こちらも中国からやってきた料理です。
麻と辣のスパイスを使用するのは火鍋と共通していますが、こちらは炒め物またはスープ。
メニューに具材が決まっているお店もありますが、お好きな野菜やお肉、キノコなどの具材をビュッフェ形式で選べるスタイルも。
その場合は専用のトレーなどに自分で盛ってカウンターへ行き、好きな麵またはご飯、ドライorスープを指定して注文します。
味はかなり濃いめ。
ご飯と一緒に食べるか、麵を入れてもらって炒め面のようにしてもらうか。
オプションでチーズが選べたりするので、よりジャンクフード感を加速させています!
なんともジャンキーな味が癖になる、一度食べ出したら止まらない一品。
ちなみに辛さを無し、スープでオーダーしたものがこちら。普通のスープヌードルかな……?
手撕白菜(Shou si bai cai)
単純なキャベツ炒めなんですが、中華料理店に行く場合必ず注文します。
美味しいお店だと、すごく美味しい野菜炒めのキャベツだけバージョンのような感じ。
油通してるのかな?
スパイスの辛味だけでなく、キャベツの甘味が引き立ちます。
まぁ店によって結構味変わるんですけどね。
点心/デザート
小籠包
言わずと知れた大人気中華料理、小籠包ですね。
ネットなどでよく言われている情報ですが、台湾の小籠包レストラン”鼎泰豊”が世界一安く食べられるのもマレーシアの魅力。
鼎泰豊は日本にもありますが、国によって値段が違うんです!
また、チェーン店であれば、大粒で肉肉しい小籠包が魅力の”Dragon-i”や、色とりどりで様々な味の小籠包を提供する”Paradise Dynasty”なんかもオススメ。
マレーシアでは、個人経営の点心のお店でも美味しい小籠包に出会えます!
日本人がよくイメージする、蓮華の上で割ったら中からスープたっぷりのものは小籠湯包が近いかも。小籠包の肉餡にスープを加えて、よりジューシーにしてあるお店もあるよ。
流沙包(Liu Sha Bao)
個人的にNo.1デザートはこちら。
英語ではGolden egg bunなどとも呼ばれます。
その理由は、中華まんを割ってみると中から黄金のカスタードが流れ出ることに由来します。
少し塩っ気もある、甘じょっぱい黄身のタレはフワフワの生地との相性も抜群。
他にもエッグタルトなど魅力的なデザートは多々ありますが、個人的にはイチオシです。
ただし、食べるときは舌を火傷しないように注意。
あと食べ方が下手だと中身がこぼれますので慣れましょう。
普通の流沙包はただのあんまんのような見た目ですが、写真のように可愛いデザインのものあります。
豆腐花
台湾デザートとして知られる豆腐のデザート。
ブラウンシュガーのソースをかけて食べるのが伝統的なスタイル。
普通の豆腐と違い、牛乳プリンのように柔らかい食感が特徴です。
マレーシアでは”豆腐花”呼称が一般的ですが、台湾のように”豆花”とだけ表記されているお店もあります。
画像は少しモダンに、お洒落にアレンジされたデザートショップの豆腐花です。
豆腐なので、少し罪悪感が薄れますね。
中華系料理の中国語解説
慣れてきたら、中華系のお店では中国語を使って注文してみましょう!
広東語?とりあえずマンダリンでなんとか……。
食材の名前
メインとなる肉や魚の名前から解説します。
以下によく出てくるものをまとめたので参考にしてください。
鶏肉 鸡肉(Jī ròu)
牛肉 牛肉(Niú ròu)
羊肉 羊肉(Yáng ròu)
卵 蛋(Dàn)
魚 鱼(Yú)
タコ 八爪鱼(bā zhuǎ yú)
イカ 乌贼(Wū zéi)*マレーシアではあまり見ない…?
エビ 虾(Xiā)
カニ 螃蟹(Páng xiè)
同じマンダリンでも、中国、台湾、マレーシアでは言い方が全然違う場合もあります。正しい単語を使っているのに通じないこともあるので注意。そういう時は英語やマレー語を織り交ぜて乗り切るのです!
米 饭(Fàn)
パン 面包(Miàn bāo)
料理名や、レストランでの会話によく出てくる単語
前述の食材名と合わせて、調理法が料理の名前になっている事が多いです。
意味を知っていれば、初めて見る料理でもある程度どんなものか想像がつくようになります。
焼く 烤(Kǎo)
炒める/揚げる 炒(Chǎo)
茹でる 烫(tàng)
蒸す 蒸(Zhēng)
引っ張る 拉(Lā)
オリジナル/標準の味 原味(Yuánwèi)
ドライ 干(Gān)
スープ 汤(Tāng)
甘い 甜的(Tián de)
辛い 辛辣的(Xīn là de)
酸っぱい 酸的(Suān de)
しょっぱい 咸的(Xián de)
形容詞になる時、中国語では的(de)を使います。
拉麺(ラーメン)は元々手で伸ばして作っていたことから、引っ張る麺=ラーメンとなったのです。
つまり、中華系ムスリムの麺料理”Mee tarik”と語源が同じ!
中華料理の文化は数ある料理の中でも歴史が特に深く、数えきれないほどの調理法があります。
なので、上記のリストはあくまでも一例です。
覚えておくと便利な、中国語の数字
単語の次は数字を覚えましょう。
入店時の人数説明、1個、2個、と個数を指定する時や、お会計まで使えます。
例えば、冷たいコーヒーが1杯欲しければ
「我要一杯咖啡冰。(Wǒ yào yī bēi kopi bīng)」
と言えば通じます。
(Kā fēiではなくkopiとよく言う気がする。)
何か注文する際、中国語では
我要~ (Wǒ yào)
请给我~ (Qǐng gěi wǒ)
といった表現がありますが、これは丁寧。
マレーシアでは突然商品名を言っても大丈夫な雰囲気があります。
マレーシアスタイルは、台湾ではぶっきらぼうに思われるかも?
0 零(Líng)
1 一(Yī)
2 二(Èr)
3 三(Sān)
4 四(Sì)
5 五(Wǔ)
6 六(Liù)
7 七(Qī)
8 八(Bā)
9 九(Jiǔ)
10 十(Shí)
11 十一(Shí yī)
12 十二(Shí Èr)
20 二十(Èr shí)
30 三十(Sān shí)
100 一百(Yī bǎi)
200 二百(Èr bǎi)